2020年7月14日火曜日

令和2年7月豪雨災害、高知DMAT活動報告

皆さん、お久しぶりです。救命診療部・山本です。
半年振りくらいに執筆してますが、山本自身は相変わらず元気です。
現在も続いております熊本県を中心とした令和2年7月豪雨災害に対して、DMAT活動を行って参りました。
まず今回の豪雨で被害に遭われていらっしゃる皆様、心からお見舞い申し上げます。
今後の支援を継続していく必要性を痛感しましたので、行ってきた活動をたくさんの方に知って頂きたく、7/10(金)~7/12(日)3日間の活動報告をしたいと思います。

今回、初めて高知日赤としてDMATを出動する形となりました。
日赤は救護班として、過去に様々な災害医療に携わっておりますが、超急性期の災害医療活動してのDMAT派遣は、今回初めての試みとなりました。
構成は医師2名、看護師2名、業務調整員2人の計6名。大ベテランの形成外科部長・中川Drの指揮の下、派遣経験のある岡林Ns、川田Logi、黒田Logiに加え、今回初派遣となる筆者・山本、長野Nsがメンバーとなりました。車両2台で現地まで陸路で到着すべく、前日の昼過ぎに出発する方針となりました。


出発式を行いました。行って参ります。


左から岡林Ns、中川リーダーDr、筆者・山本、長野Ns、川田Logi、黒田Logi。 


陸路で片道計12時間程の大移動。車両もよく頑張ってくれました。


熊本県八代市に宿泊後、活動1日目は熊本県人吉市内にある保健所へ参集しました。既に人吉・球磨医療圏保健医療調整本部では様々な情報が入り乱れている状態で、ごった返しておりました。

受付を行う我がDMAT。緊張しています。

調整本部では、徳島DMAT・三村Drが現場指揮を取られておりました。


本部から指令を頂き、当隊はまず午前中、人吉市内の介護老人保健施設の聞き取り調査を行う方針となりました。
施設の足りていないライフライン、物品、そして被災者の病状等、必要な環境を早期に整える事が出来るように、調査を行って参りました。3施設、巡回させて頂きました。
被災された皆さん、本当に快く状況を教えて戴けて、頭が上がりませんでした。
幸い我々が調査を行った場所は、高くても腰辺りまでの浸水で被害がおさまっておりました。が、1階に診療スペースのある施設では紙カルテが浸かってしまったり、家屋が濡れてしまったり等、普段の業務がままならない状態でした。
しっかり調査をして、本部へ無事に報告を終了しました。


隊員でブリーフィング中です。調査内容を確認しています。

白壁の真ん中の高さで、黒い線が走っています。その高さまで浸水したそうです。



午後になり、再び調整本部から指令を受けました。
球磨村の被害が大きく、球磨村総合運動公園内で数百人の被災者が寝泊まりをしているため、そちらの介入を、とのことで、球磨村総合運動公園内にあります「さくらドーム」内に設置してある、熊本県球磨村総合運動公園現場指揮所へ出向く事となりました。

人吉市内の球磨川(下流)。木々の瓦礫が残っています。

氾濫後の球磨川川辺。被害の大きさを物語っています。

到着したさくらドーム。奥に見える屋根下での活動がメインとなりました。


さくらドームに到着すると、既にドーム下のスペースにはブルーシートが引かれ、様々な機関が集っていました。他DMATはもちろん、自衛隊、保健師を始めとした役場の方々、地元消防団等。
球磨村は山間部の集落が多く、豪雨の影響で孤立化した集落がたくさんまだ残っている状態でした。
ようやく避難できた公民館や旅館とした施設内にも、たくさんの被災者が取り残された状態で、残された被災者の体調、医療ニーズ、そして建物のライフライン把握等、急務が山積みの状態でした。被災地状況のサーベランス、孤立した集落への医療提供が急がれる状態でした。


画面右には、指揮所の統率をされていた兵庫県災害医療センターの島津Dr。
中央に、本部要員となった中川Drも。

届けられた物資の段ボール箱。

当隊はまず、指揮所本部の支援にDr1人、Logi2人が入る事となりました。急務となっている被災地のサーベイランスとして、Dr1人、Ns1人が自衛隊、保健師、薬剤師とチームとなり、避難場所となっている公民館等へ出向く活動を行ってきました。


出向く途中に、再び豪雨が。浸水がひどく、車両が通るのもギリギリの状態でした。

避難場所まで自衛隊の車で案内をして頂きました。住民の方々は、地元保健師と繋がりがとても強く、保健師の方々は住民の顔、住所、建物等、だいたいを把握できているそうで、本活動に保健師の方の存在は必須でした。
避難場所にたどり着くと、20~30人もの避難された方々が、保健師の方と泣いて抱き合って喜んでおりました。「あーやっと会えた。」と。
その姿をみて、この災害の恐ろしさを目の当たりにしました。
無事に過ごせているこの方々の生活を、より維持していけるように、我々も何とか協力したい、そう心に強く思った瞬間でもありました。

避難所の巡回で感じた事は、幸い建物の崩壊の危険性は少なそうでありました。
医療介入が必要な被災者も少人数であり、その点をお伝えすると、地元の方々も保健師の方も、少し安堵の表情を浮かべておられました。

そうしているうちに、保健師の方に「車中泊している方が、足が腫れてきて、動けなくなった。」といった情報が舞い込んできました。すぐさま診察に向かいました。
その方は一人暮らし、ペットのワンちゃんと過ごしているようで、自宅が崩壊し劣悪な環境となってしまったため、迷惑をかけまいと、自身の車内で過ごしていたようです。
徐々に下肢腫脹が悪化し、発熱まで来しており、治療介入の対象とさせて頂きました。
持参したエコーで下肢静脈血栓がない事を確認は出来たものの、感染症悪化の危険性もあり、血栓症の明確な否定が必要であったため、救急搬送と促す方針となりました。
もちろん一緒のワンちゃん、残される車両についても、保健師の方や地元住民の方と協力をして、無事に手配を完了させる事が出来ました。


活動日2日目は、かなり悪天候な朝から活動が始まりました。
ドーム内では、孤立地域からヘリで複数人数の受け入れを予定しておりましたが、そちらも悪天候でキャンセル。
我々の活動範囲内である球磨村自体が孤立してしまうのではないかと危惧されましたが、何とか天候も改善し、午後からは活動に勤しむ事が出来ました。
向かう途中の高速道路から。崖が崩れております。


本部にて、到着された隊員管理を行う、黒田Logi。

被災地サーベイランスを中心に行っている最中も、さくらドーム内に設置されている診察エリアには、たくさんの被災者が集って来られました。
山間部からヘリ搬送でようやくドームに辿り着いた方も居れば、自衛隊の車両で陸路を介してドームへたどり着いた方もいて、2日目午後はそのような避難者の診療を行いました。


岡林Drが何やら作成しております。何を作っているんでしょう・・・?

被災者の診療スペースでした。プライバシーをしっかり配慮。

筆者・山本と、長野Nsで、診療エリアのリーダーを務めました。
超急性期の、多傷病者が居る場合は、トリアージ業務として赤黄緑といった重症度を分けて診療を行う、といった流れがあります。
我々の今回の業務では、幸い歩行可能な緑と呼ばれる方々が多数で、治療介入が急ぎで必要な方がほぼいませんでした。ただ被災された方々は、生活の変化に戸惑っていらっしゃったり、処方薬が流されてしまって内服が出来ない方がいらっしゃったり、何かしらの不安を抱えてらっしゃったため、そのようなニーズに答えるべく、診療エリアを展開しました。

筆者・山本がホワイトボードを使って、隊員と作戦を練っています。

診療に当たりますと、様々な負担を強いられ、被災された方々は、極限で生活を続けているんだなと、痛感致しました。
少しの時間でも、この方々の不安を軽減できるような、そんな提案が出来れば、と時間が許す限り、診療に精進しておりました。


活動日3日目は、行っている業務の引継ぎをメインとし、活動を行いました。
この活動が、隊が変わったとしても継続して行われていくよう、システム作り、申し送り等をしっかり行ってきました。
申し送り中。たくさんのDMATが集っています。

現場のニーズは日に日に変化しております。
我々の活動範囲の期間で、ようやく孤立集落のサーベイランスは終了出来たようでした。
が、まだそれぞれの避難場所にはたくさんの方が集っており、引き続き支援は必要と思われます。
何より、今後も悪天候が続くようであれば、さらなる被害が増えないように、対策も練らなければなりません。
そして何より、地元住民はもちろんですが、この災害で支援に携わっている地元の方々自身も被災者であり、家族もいます。
ご自身の体調も含め、長い目で見て無理のない範囲で、支援活動を続けて頂ければと思います。


3日目の活動を終え、再び陸路で高知へ戻って参りました。
活動を終えた高知DMAT。

早朝にも関わらず、病院前で出待ちして下さった皆さん。

最後になりましたが、勤務を変わって頂いたり、後方支援として様々な形でサポート頂きました高知日赤の職員の皆さん、そして日本赤十字社・高知県支部の皆さん、本当にありがとうございました。
この活動を終えて感じた経験を、是非今後も継承していけるように、精進して参ります。
来週には、当院から日赤救護班が災害支援に向かいます。
そのサポートも引き続き行ってまいります。

もう一度。
今回の災害で多くの被害に遭われた皆様、心からお見舞い申し上げます。
引き続き、支援を続けて参ります。

長文、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。